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囲碁の魅力

弁護士 浅野喜彦

 今年の2月、ついに囲碁の初段位を取得しました。自分の執務室に日本棋院の免状を飾り、感慨に浸っています。

囲碁は、おそらく世界で一番おもしろいゲームですが、残念ながら、その魅力があまり知られていません。そこで今回は、いまだ多くの人が体験できていない囲碁の魅力について紹介させていただきます。

やや長文になりますが、ご容赦ください。

 

①一粒で三度おいしい

 わかりにくいかも知れませんが、1局の碁には、「序盤」「中盤」「終盤」という3つの段階があります。そして、それぞれの段階で、ほとんど違うゲームかと思うほど頭の使い方が変わるので、退屈するということがありません。囲碁を勉強する人にとっても、学びの対象がいわば3科目あり、かつ、どれも楽しいわけですから、飽きるということがないのです。

 ちなみに、将棋や麻雀は、(よく知らないので偉そうなことはいえないのですが)囲碁でいえば「中盤」に近い(序盤と終盤に当たる部分がない)ゲームだと思います。それはそれでもちろん面白いのですが、序盤と終盤の面白さを足したぶん、囲碁に軍配が上がりますね。

②局面が頻繁に変わる

 囲碁は、勝利への道のりが一本筋でなく、相手の応手ひとつで局面がガラッと変わるゲームです。1回の勝負の中で、これほどコロコロと方向転換が生じるゲームは、おそらく他にないでしょう。囲碁というゲームの一番の特徴です。

③日常からの開放

 1局の碁の中で最もスリリングなのは、自分の石が死ぬ(取られる)か生きるかの攻防です。このとき、碁を打っている人は盤面に没頭し、しばしば周りの声すら聞こえなくなります。この集中力を、囲碁ではなく仕事で発揮できればと思うと、残念でなりません。

 しかし、考えてみれば、日常生活の中で、これほど純粋に没頭する時間を持てることは、幸福です。おそらく、ストレスの解消や認知症の予防にも好適だと思います。

 また、囲碁は、最終的に自分の陣地(1目(もく)、2目、と数えます)を多くとったほうが勝ちというゲームですが、碁盤が広いため、僅差のときは、自分が優勢なのか劣勢なのかわかりません。そういうときは、最後まで打ったあとで整地(双方の陣地を整形して数えること)をする必要があるので、対局者は、必然的に、最後の最後まで、1目でも多く陣地を取るために全力を尽くすことになります。

 こういうところも、日常生活ではなかなか得られない、貴重な時間です。

④互譲の精神

 囲碁には得失点差というものがなく、大差でも半目差でも、勝ちは勝ち、負けは負けです。その結果、相手を叩きのめすことまでは必要ないので、しばしば、ギブアンドテイクの局面が生じます。「私はこちらをもらうので、あなたはあちらをどうぞ。」というわけです。

   また、不思議なことに、互譲の精神がなければ、なかなか自分の陣地を確保することができません。あれもこれも欲しいという欲張りは、たいてい上手くいかないのです。碁に学ぶことは多いですね。

⑤判断と選択のゲーム

 囲碁は自由度の高いゲームです。もちろん、局面によっては絶対に外せない「この一手」というものもありますが、そうでない場面では、AかBかの方針を自分で選択することができます。

 ただし、ここで言っているのは、どう打てば勝てるかという当・不当の問題ではなく、どちらが正解ともいえない場合に、自分がどの方針を選択するかという、いわば好みの問題です。この点が、1つしか正解のない他の多くのゲームとは根本的に違うところです。

 ところで、選択の余地があるということは、同時に、自分の責任において選択をしなければならないということですから、これはある意味で人生に似ています。算数や漢字テストのように、正しい答えの存在が保証されているわけではありません。この、厳しいと同時に楽しい世界観を、子どもたちにもぜひ体験してほしいと思います。

⑥思わぬ友人ができる

 囲碁に年齢は関係ありません。私が30歳を過ぎて囲碁を始めたとき、碁会所で囲碁友達の第1号になってくれたのは、92歳のおじいさんでした。囲碁をやっていると、上から下まで、本来なら接点のないような年齢層の人と仲良くなります。

 また、最近はインターネット環境が充実しているので、海外の人と対局することもできますし、碁会所で、中国や韓国の方にお会いする機会もあります。これも、囲碁をやっていなければなかなかできない経験です。

⑦AIとの関わり

 近年の囲碁は、AIを抜きにして語れません。AIによって、これまでの常識を覆す定石が成立したり、ほんらい正解のない場面でも数学的に「正しい」答えが出たりしています。

 棋力の面でも、おそらくAIは、現時点で人間の世界チャンピオンを凌駕しています。しかし、2018年の名人戦では、井山裕太名人(当時)が打った手の意味とその局面状況が難解過ぎたため、コンピューターが判定を拒否し、「AIが壊れた」と話題になりました。人間の叡智や囲碁の奥深さを感じさせる出来事ですね。

 

 どうしても長くなってしまいましたが、私の考える囲碁の魅力をいくつか紹介させていただきました。

 はじめに述べたとおり、囲碁は世界で一番おもしろいゲームです。私は友人にも同僚にもしばしばこれを勧めていますが、なかなか乗ってくる人はいません。もし本稿を読んで囲碁をやってみようという気持ちになる方がおられたら、幸いです。

 どうもありがとうございました。

 

  日本棋院の免状