コラム
column
「自由主義国家陣営の代表ですか」 (トランプ大統領へのゼレンスキー大統領の問いかけ)
1、アメリカに起こっている異常な状況
本年に入って以来、アメリカ大統領の言動や相次ぐ大統領令の発動が、世界を揺るがし続けています。「グリーンランドを取得する。」とか「ガザをアメリカの所有にする。」などといった、近代における民主的な国際関係の下では、およそ容認できない発言には、「そんなことを言うか」との驚きを感じざるをえません。これを日本の歴史の中で見るなら、まるで戦国時代の大名が取った態度・対応と同趣旨のものと言えます。また、ウクライナに関する発言も「続けられてきた支援は金で返してもらう」などといった、大国の指導者の発言としては、品性を欠く発言も伝えられています。さらには、選挙によって選出されたのでも、また公人でもない-私人に過ぎないマスクなる人物が、連邦政府の職員に対し、退職を求め、応じないなら解雇するなどといった言動・行動を取っている事態には、「適正手続」がどこに行ってしまったのだろうかとの思いを強くします。今日の日本における通常の理念に照らすと、まさに「無法」としか言いようのないような事態が続出させられていると感じられます。このような事態に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領が発した言葉として伝えられたものが、本稿の標記です。
2、前項のような事態につき、言いたいこと、書きたいことは山ほどありますが、本コラムの字数の関係から、次の3つのことを記させていただきます。
(1つ目)統治制度の在り方への問いかけ
前項で述べたような事態の発現は、統治制度としての大統領制の問題点を、大きく浮かび上がらせています。大統領制は、迅速な統治が可能になるという良い側面を有しますが、ひとたび独裁的な大統領が就任してしまうと、とんでもない事態を招き、その修正が効かないという側面が世界に示され続けています。少なくとも、今のような状況の発現を見てしまうと、「統治制度としては、議院内閣制がベターなのでないか」との思いを生じさせられてしまいます。この点、将来の日本で「有るべき統治制度」が議題に上がった時、考慮する重大な要素が眼前に提示されたものと捉えておく必要性を感じます。
(2つ目)あまりの無法・無知の権力行使にさらされている人々への想い
知性・人権尊重・歴史認識といった点において、あまりに欠落や偏りの有る人物を国のトップとして抱き、その認めがたい言動・行動に直面させられている人々の苦悩への想いです。他国人である私においてですら、吐き気を催すような低劣な言動を、自国トップの言動として聞かざるを得ない、良識あるアメリカの人々の胸中に想いを寄せざるを得ません。日本国のトップがあのような言動・態度を示すような事態が生じれば、その下で生きていくことのいらだたしさや精神の苦しみはいかばかりのものかと思いやられます。法に関わる立場の一人として、良識あるアメリカの人々の思いが、せめて司法の力により報われることを強く願う次第です。また、理不尽な侵略に抵抗を続けているウクライナの人々が、理不尽な逆風に屈することなく、国際的に正当な扱いの下で、戦争の終結を図れることを願う次第です。
(3つ目)是正と変革への確信を
非道・違法は、必ずや糾され、是正されるという、過去の歴史から得られる教訓を、先ずはアメリカ国民に確信をもってもらいたいと願います。誤った権力の存在は、それが如何に強力に見えようとも、時の経過の下で、必ず倒れ、その誤りが是正されることは歴史の教えるところです。2年後の中間選挙、4年後の大統領選挙において、無法と言えるような事態の是正が、アメリカ国民自身の手によって、達成されることを願い且つ確信するものです。また、大国間の勝手な思惑や取り引きによって、侵略に抗するウクライナ国民の努力が一時的に後退を余儀なくされるようなことが仮に発生したとしても、時の経過の中でそのような努力が有意味であったことが、必ずや実証されるに至ることに、確信をもって世界の動向を見守りたいものです。