コラム
column
生活保護基準引き下げ最高裁判決への対応・行方
令和7年7月に、生活保護基準の引き下げをめぐる裁判で、最高裁が保護変更決定処分の取り消しを命じたとのコラムを書きました。
上記最高裁判決を受けて、原告ら及び生活保護弁護団は、保護変更決定処分が行われた2013年までさかのぼって、支払われていたはずの支給額全額を「遡及支給」する施策を求めていました。ところが、国・厚生労働省は、最高裁判決で違法とされた「デフレ調整(-4.78%)」に代え、低所得者(総世帯の下位10%)の消費実態と比べた「水準調整(-2.49%)」が本来の引き下げるべき給付額の幅であったとし、その差額分を追加支給するとしました。なお、原告らに対しては、さらに-2.49%の減額分も特別支給金として支給する方針を示しました。
「全受給世帯への全額補償」を求めてきた生活保護弁護団としては、このような原告と原告以外を分断する形の減額方針に、最高裁判決の意義を矮小化するものであるとともに、無差別平等の原則(-生活保護法2条「すべて国は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を無差別平等に受けることができる」-)、憲法14条の平等原則に反するなどとして、厚生労働省に対応策の撤回を求めています。
今回の厚生労働省の対応には、全国の大学教授らからも、令和7年12月8日付けで「法学研究者による緊急声明」が出されています。当該緊急声明のなかでは「引き下げ処分全体が最高裁により取消されたにもかかわらず、12年経った時点で再度行政が保護費減額処分を行うことは、最高裁判決上に行政の判断を置く、日本国憲法の基本原則である三権分立原則に違反する許されないこと」・「司法判断の上に厚生労働省の行政判断を置く対応を許すことは・・・日本が法治国家であり続けることを破壊することを意味し、日本の民主主義の根幹を壊すことにつながると言わざるを得ない」と強い批判が示されています。
生活保護弁護団に加わっている弁護士の一員として、厚生労働省が最高裁判決に従い、すべての生活保護利用者に引き下げ以前の生活保護基準に従った保護を実施・実現することを強く主張します。